自宅の水風呂を冷やす機械を調べると、数万円のものと100万円を超えるものが同じ「チラー」という名前で並んでいます。この差が何なのかが分かりません。
結論から書きます。値段を決めているのは「何度まで下げたいか」ではなく、「どの電源を引けるか」です。
冷却能力は電気で作ります。能力を上げるには電源が要る。だから価格は連続ではなく、100V・単相200V・三相200Vの3段で跳ねます。目標水温は、その段を選ぶための入力値にすぎません。
この記事では、必要な冷却能力を自分で計算する方法と、電源ごとの工事費、そして建築会社の設計担当から実際に聞いた価格感を並べます。調査時点は2026年9月23日です。
価格は連続ではなく、電源で段になる
チラーの電源は大きく3つに分かれます。工事費の目安は次のとおりです。
| 電源 | 電気工事 | 冷却力 |
|---|---|---|
| 単相100V | 不要 | 控えめ |
| 単相200V | 変換工事 1〜3万円程度 | 中 |
| 三相200V | 引き込み工事 20万円〜 | 大 |
この工事費はサウナ設備事業者の解説によるもので、電力会社や地域で変わります。ただし段が3つあることと、桁が1万円台・20万円台と違うことは押さえておいて損がありません。
効いてくるのは三相200Vです。機械の値段より工事のほうが先に効きますし、しかも三相は一般の戸建てに標準では来ていません。引き込みから始まります。
つまり「もっと冷たくしたい」は、設備の話ではなく電気の話になります。サウナ本体の200V専用回路と合わせて、屋内サウナの200V専用回路にいくらかかるかで扱った電気容量の設計に跳ね返ります。
サウナ本体と合わせると、200Vが2系統になる
見落としやすいのはここです。サウナストーブ自体も200Vの専用回路を使います。
サウナメーカーの電気工事仕様書では、家庭用の電気ストーブは出力4.5kW〜7.4kWがすべて200Vで、機種ごとに専用の漏電ブレーカー(20A〜50A)と、太い配線(3.5sq〜8sq)が指定されています。
つまりチラーを入れるなら、200Vの回路が2本になります。
- サウナストーブ用の専用回路
- チラー用の回路(単相200Vの場合)
分電盤の空きと、契約容量の両方に効きます。サウナ側だけで契約アンペアをかなり使うので、チラーを足せるかは家全体の容量しだいです。詳しくは注文住宅の電気容量は足りるかに書きました。
必要な冷却能力は、自分で計算できる
売る側の記事は「必要か、不要か」で二分しがちですが、必要な能力は水量と目標温度から計算できます。やることは掛け算ひとつです。
水の比熱は 4.186 kJ/(kg・K)。1リットルは1キログラムです。
必要な熱量(kJ)= 水量(L)× 4.186 × 下げたい温度差(℃)
例として、200リットルの水を25℃から16℃まで、9℃下げる場合を計算します。
- 200 × 4.186 × 9 = 7,535 kJ
- 1 kWh = 3,600 kJ なので、約 2.09 kWh
あとは「何時間で下げたいか」で割ります。
| 水量 | 9℃下げるのに必要 | 1時間で | 3時間で | 8時間で |
|---|---|---|---|---|
| 100L(一人用) | 1.05 kWh | 1.05 kW | 0.35 kW | 0.13 kW |
| 200L(ゆったり) | 2.09 kWh | 2.09 kW | 0.70 kW | 0.26 kW |
| 300L | 3.14 kWh | 3.14 kW | 1.05 kW | 0.39 kW |
急いで冷やすほど、大きな能力が要ります。8時間かけてよいなら200Lでも0.26 kWで足りる計算です。就寝中に冷やしておく運用なら、小さい機械で届きます。
注意:冷却能力と消費電力は別
表の kW は冷却能力(水から奪う熱)で、消費電力ではありません。エアコンと同じで、チラーは消費した電力より多くの熱を動かします。カタログを見るときは、どちらの kW かを必ず確かめてください。
冷やし続けるための能力は、別に要る
上の計算は「下げるまで」です。下げた温度を保つには、外から入ってくる熱と釣り合う能力が別に要ります。水面からの蒸発、容器の断熱、外気温、直射日光。ここは条件しだいなので、計算では出せません。
参考になる実測がひとつあります。7月・外気温32℃・屋内設置という条件で、約50分で水温が8℃下がったという記録が公開されています。屋外で夏場なら、同じ機械でももっと時間がかかります。
建築会社の設計担当はこう言った
2026年9月23日、大手ハウスメーカー1社との打ち合わせで、水風呂の話になりました。設計担当の説明はこうです。
- 15℃以下に保つ機械で30万円くらい
- 下げれば下げるほど、機械の値段が上がる。12〜13℃になるとさらに上がる
- 逆に40℃まで上げれば露天風呂にもなる
- 水を張るだけの簡易的なユニットなら数万円。必要なときだけ貯める
一方、販売側の解説には「家庭用チラーだけでも100万円を超えることも少なくない」という記述があります。30万円と100万円超。この開きが、最初に書いた電源の段です。
「下げるほど高くなる」は、値札に温度が書いてあるという意味ではありません。低い温度を狙うほど大きな冷却能力が要り、大きな能力には大きな電源が要る、という順序です。
目標水温の目安
複数の解説で、水風呂の適温は16〜17℃とされています。「キンキン」と言われる12〜13℃を狙うと、ひとつ上の段に入ります。私自身は「シングル」を目指すつもりはないのですが、家庭用ではシングルも目指せます。
何度で満足できるかを先に決めておくと、機械も電源も決まります。ここを決めずに機種から見ると、青天井になります。
常時冷やすか、使うときだけ張るか
値段を左右する分岐がもうひとつあります。冷やし続けるのか、使うときだけ水を張るのか。
| 常時冷却 | 使うときだけ | |
|---|---|---|
| 機械 | チラーが要る | 数万円のユニットで足りる場合も |
| 電気 | 保冷のぶん動き続ける | 使う前に冷やす/水道水のまま |
| 手間 | 少ない | 毎回貯める |
| 衛生 | 水を管理し続ける必要 | 都度入れ替えなので楽 |
設計担当も「常に水を張っておくのは衛生面で大変」と言っていました。使用頻度が週1〜2回なら、都度張る運用のほうが機械も電気も小さく済みます。
逆に毎日入るなら、都度貯める手間と水道代が効いてきます。使用頻度から決める話であって、どちらが正解ということはありません。
設計段階でやっておくこと
チラーを後から足すのは、電気工事のやり直しになります。建てる前に決めておくのはこの3つです。
1. 目標水温を決める
16〜17℃で足りるのか、12〜13℃、シングルを狙うのか。ここで電源の段が決まります。
2. 水量を決める
一人用か、二人で入るか。上の表の掛け算に入れれば、必要な能力が出ます。
3. 電源を確保しておく
単相200Vまでなら、新築時に回路を1本用意しておけば済みます。三相200Vを引く可能性があるなら、引き込みの可否と費用を電力会社と建築会社に確認してください。ここは後から変えると高くつきます。
あわせて、注文住宅の電気容量は足りるかで扱った契約アンペアと分電盤の主幹容量も見ておくと、サウナ本体と合わせた総量が分かります。
よくある質問
Q1. チラーなしで水道水のままでは駄目ですか?
A. 季節によります。冬場の水道水は十分に冷たく、機械なしで成立します。問題は夏です。地域差はありますが、夏場の水道水は25℃を超えることがあり、適温とされる16〜17℃とは開きがあります。夏に入るかどうかで判断が変わります。
Q2. 電気代はどのくらいかかりますか?
A. 機種と運用で大きく変わるため、一概に言えません。小型のポータブルタイプについて「1日8時間の稼働で月およそ1,000円」という記述はありますが、これは小型機の値です。常時冷却する大きな機械では桁が変わります。カタログの消費電力(kW)に、動かす時間と電力単価を掛けて自分で出してください。
Q3. 既存の浴槽を水風呂にできますか?
A. 後付けの配管工事で、既設の浴槽をチラー対応にする施工はあります。給排水はそのままに冷却機能だけ足す形です。ただし新築で最初から組むより高くつくのが普通なので、入れる可能性があるなら設計段階で配管と電源を用意しておくほうが安全です。
Q4. 何リットルの浴槽を選べばいいですか?
A. 大きいほど気持ちよく入れますが、水量が増えるほど必要な冷却能力も水道代も増えます。上の掛け算で、100Lと200Lで必要な能力が倍違うことを確かめてから決めてください。
この記事の情報について
- 必要な冷却能力の計算は、水の比熱 4.186 kJ/(kg・K) を使った単純計算です。容器の断熱、外気温、蒸発による損失は含みません。実際にはこれより余裕のある能力が要ります
- 電源の区分と電気工事費の目安(単相200Vの変換1〜3万円、三相200Vの引き込み20万円〜)は、住宅設備事業者の解説によります。電力会社や地域によって変わります。2026年9月23日確認
- 適温16〜17℃、および「家庭用チラーでも100万円を超えることがある」は、複数のサウナ設備事業者の解説に共通する記述です。メーカーの公表値ではありません
- 「約50分で8℃低下」は、7月・外気温32℃・屋内設置という条件で公開されている実測例です。機種は特定していません
- 引用した設計担当の発言は、2026年9月23日に大手ハウスメーカー1社から受けた説明です。会社によって扱いが異なります
- 筆者はまだチラーを購入していません。正式見積もりは取っていないため、価格はすべて聞き取りと公開資料の範囲です
この記事は「設計」の工程です。
- 関連:屋内サウナの200V専用回路にいくらかかるか — サウナ本体側の電気工事
- 関連:注文住宅の電気容量は足りるか — 家全体の容量から見る
- 関連:中庭のある家でサウナの外気浴は兼用できるか — 水風呂の置き場所
- 次:サウナ付き注文住宅の費用 — 総額の組み立て
参考
- 水風呂チラーはどう使う?仕組み・施工・メンテナンス — 電源区分と工事費、実測例
- 自宅用サウナで水風呂を楽しむ方法|My Sauna
- 水風呂にチラーは必要?家庭用サウナに最適な冷却装置と仕組み|kokolo sauna

