注文住宅の電気容量は足りるか|サウナ・IH・EVで60Aを超える

サウナを入れたい、IHにしたい、いずれ電気自動車も置きたい。この3つを並べただけで、一般的な住宅の契約上限である60Aを超えます。

超えたときに起きるのは、ブレーカーが落ちることではありません。電気の契約プランそのものが変わります。そして契約プランは、分電盤の主幹ブレーカーをどれにするかで決まる場合があります。つまり設計段階の一行が、その家に住んでいるあいだの基本料金を決めるということです。

ところが、この話はハウスメーカーとの商談では一度も出ませんでした。サウナ、全館空調、EVと電気を使う設備の話はひと通りしたのに、契約アンペアや分電盤の容量に触れた場面はゼロです。記録は後半に載せます。

先に結論を書きます。

  • 200V機器は「W ÷ 200」がそのままアンペアになる。サウナ6kWは30A、IHは20A
  • 60Aを超えると、契約はアンペア制からkVA制に変わる
  • 確認するのは電気工事会社ではなく、設計の担当者。しかも間取りが固まる前

まず、60Aという線が何なのか

東京電力エナジーパートナーの家庭向けプラン(スタンダードS/従量電灯B)は、10A〜60Aの範囲で契約します。上限が60Aです。

60Aを超える場合は、スタンダードL/従量電灯Cという別のプランになります。こちらはアンペアではなくkVA(キロボルトアンペア)で契約する方式で、6kVA以上50kVA未満が対象です。60A=6kVAなので、ちょうど境目でつながっています。

ここで押さえておくべきなのは、kVA契約では容量の決まり方が変わるという点です。

kVA契約の契約容量には、大きく2つの決め方があります。

決め方 何で決まるか
主開閉器契約 分電盤の主幹ブレーカー(漏電遮断器)の定格電流
負荷設備契約 家にある電気機器の容量を合計して算定

主開閉器契約の場合、契約容量は「主開閉器の定格電流 × 電圧 ÷ 1,000」で計算されます。中国電力は単相3線式の電圧を200Vとして計算する旨を公表しており、この式だと定格60Aの主幹で12kVAになります。

注意点をひとつ。この換算式は電力会社ごとに約款が違い、東京電力管内について同じ式が使われるかどうかは、今回の調査では公表資料で確認できませんでした。推測で書くわけにいかないので、ここは「電力会社によって違うので、建築会社経由で確認すること」とだけ書いておきます。

いずれにしても、主幹ブレーカーの選定が、そのまま毎月の基本料金に効くという構造は変わりません。これは新築の設計段階でしか決められない部分です。


200V機器を並べると、何アンペアになるか

ここに、間違えやすい落とし穴があります。200V機器には2つのアンペアがあり、用途が違います。

どちらの数字か 計算 何に使うか
回路に流れる電流 W÷200 配線の太さ、ブレーカーの選定
契約アンペアに対する数字 W÷100 電力会社との契約容量

理由は単相3線式の仕組みです。200Vの機器はL1とL2の両方の線に電流が流れます。片方だけを見れば W÷200 ですが、2本を合計すると W÷100 と同じになります。だから契約アンペアに対しては100V換算で数えます。

サウナメーカーの電気工事仕様書にも、同じ注意が明記されています。「200Vで稼働するためブレーカーに必要な容量は必要アンペア数の半分。ただし電力会社の契約基準が100Vであるため」として、6kWのストーブを60Aと表記しています。

両方を並べます。

機器 消費電力 回路の電流(÷200) 契約に効く(÷100) 出典
サウナヒーター(ウォール6) 6.0kW 30A 60A ハルビア公表スペック/メーカー電気工事仕様書
サウナヒーター(キップ6/シリンドロ5.5) 5.5kW 27.5A 55A 同上
サウナヒーター(ウォール8/キップ8) 7.4kW 37A 74A 同上
サウナヒーター(デルタ) 2.7kW 13.5A 27A 同上
IHクッキングヒーター(KZ-K221DS) 4.0kW 20A 40A パナソニック公表仕様
EV普通充電(3kWタイプ) 3.0kW 15A 30A 一般的な住宅用普通充電の出力
EV普通充電(6kWタイプ) 6.0kW 30A 60A 同上

右から2列目が、契約アンペアと足し算すべき数字です。

サウナヒーターは、家庭用として選ばれる出力帯(2.7kW〜7.4kW)はすべて単相200Vです。三相200Vという業務用の電源が必要になるのは13.2kW以上の機種から。家庭用サウナで三相の心配は要りません。必要なのは単相200Vの専用回路です(屋内サウナの200V専用回路の記事で費用を書いています)。

IHは機種で幅があります。上の4.0kWは20Aのコンセントですが、上位機種には5.8kW・30Aのものもあります。「IHは20A」と決め打ちせず、選んだ機種の仕様で見てください。


この3つを足すと、上限の倍を超える

サウナ6kW・IH4.0kW・EV普通充電3kWを、契約に効く数字で合計すると130Aです。契約上限60Aの、倍以上になります。

機器 契約に効く電流
サウナヒーター 6kW 60A
IHクッキングヒーター 4.0kW 40A
EV普通充電 3kW 30A
合計 130A

この記事は当初、これを W÷200 で数えて「65A」と書いていました。結論(上限を超える)は同じですが、超え方の桁が違います。2026年9月23日に、サウナメーカーの電気工事仕様書で100V換算の記載を見つけて訂正しました。

しかもこれは、200Vの大物3つだけを足した数字です。ここにまだ何も乗っていません。

乗っていないものを挙げます。

  • 全館空調(機器そのものの消費電力)
  • エコキュートまたは給湯器
  • 食洗機、電子レンジ、ドライヤー、炊飯器、電気ケトル
  • 部屋のエアコン(全館空調でない場合)
  • 照明、テレビ、パソコン、冷蔵庫

もちろん、これらが全部同時に動くわけではありません。契約容量は「同時に使う最大」で決めるものなので、サウナを焚きながらIHで調理しEVを充電する時間帯があるかが判断の分かれ目になります。

ただ、サウナは温まるまで30分以上かかります。夕食の支度と重なりやすい。そして帰宅と同時に充電を始めるなら、EVもその時間帯です。「同時に使わない前提」で容量を切り詰めると、いちばん使いたい時間帯にブレーカーが落ちる家になりかねません。


サウナが2畳なら、機種はここに絞られる

2畳(室容積で約7.3㎥)なら、ハルビアの適応室容積の表からはウォール6(6kW)に絞られます。部屋の広さを決めた時点で、電流も決まります。

自分の設計要件は「屋内組み込み・約2畳・浴室隣接」です。2畳は約3.3㎡。天井高を2.2mとすると、室容積は約7.3㎥になります。

ハルビアの公表スペックを、この容積で引くとこうなります。

機種 出力 適応室容積 7.3㎥に合うか
デルタ3 2.7kW 1.5〜2.7㎥ 小さい
ウォール4.5 4.5kW 3〜6㎥ わずかに足りない
ウォール6 6kW 5〜8㎥ 合う
キップ6 5.5kW 4〜7㎥ 上限ぎりぎり
ウォール8/キップ8 7.4kW 6〜11㎥ 合うが余裕を取りすぎ

2畳のサウナ室を作ると決めた時点で、6kW=契約に効く60Aが確定します。間取りの「サウナ室2畳」という一行が、60A契約の枠をひとりで使い切る、ということです。

そして重要なのは順番です。部屋の広さを決めてから機種を選ぶのではなく、機種の適応容積のほうが先に部屋の広さを縛ります。


商談で、容量の話は一度も出なかった

全館空調・太陽光・蓄電池・EVと、電気を使う設備の話はひと通り出ました。そのどれについても、契約アンペアや分電盤の容量の話は一度も出ていません。

2026年8月30日、大手ハウスメーカー1社の展示場で2回目の商談をしました。設計担当も同席しています。やりとりは全文を記録してあります。

出てきた電気まわりの話を並べます。

  • 全館空調。市販のルームエアコン1台+ダクト循環で、機器は45〜50万円クラス
  • 太陽光。営業の言葉で「元はほぼ取れない。15年後ぐらいにトントン」
  • 蓄電池とEV。「蓄電できるお車とか、もし買われた時は車に充電して、災害時は車からもらう」

全部、電気を使う話です。それでも、記録を「アンペア」「分電盤」「ブレーカー」「契約容量」「主幹」で検索しても、1件もヒットしません。

サウナについては、こう言われています。

メーカー選定は施主側。「いろいろ見て調べて選んだ方がいい」

施工とメーカーとのやりとりは会社が請け負う。ただしどのヒーターを選ぶかは施主が決める。この分担だと、何kWの機器が入るかが決まらないまま、電気の設計が進むことになります。誰も嘘をついていないのに、容量の計算だけが宙に浮きます。

自分の商談チェックリストにも「200V電気容量・専用回路の設計」という項目は入れてありましたが、2回の商談を終えた時点で、まだチェックが付いていません。聞き忘れたというより、話の流れで出てこなかった、というのが正確なところです。

なので、次の商談で聞くのはこの2つです。「うちの機器構成だと主幹容量は何Aになるか」と「契約はアンペア制のままか、kVA制になるか」。回答が即答で返るか持ち帰りになるかも含めて、この記事に追記します。


設計が固まる前に確認する4つ

順番があります。分電盤の話を電気工事の段階で持ち出しても遅いので、間取りと同時に聞きます。

  1. 主幹ブレーカーの定格を何Aで見積もっているか。「一般的には60Aです」で終わらせず、うちの機器構成での数字を出してもらう
  2. 契約はアンペア制のままか、kVA制になるか。なるなら、基本料金が今の想定からいくら変わるか
  3. サウナヒーターの出力を、いつまでに確定させる必要があるか。機種未定のまま電気図面を引くとどうなるかを聞く
  4. 将来EVを置く場合の予備回路を、いま引いておくといくらか。あとから引くのと、新築時に空配管だけ通しておくのとの差額

4つ目は特に、あとから効きます。壁を閉じてしまうと配線経路がなくなるためです。この構造はサウナを後付けする場合とまったく同じで、新築時に「使うかどうか分からないもの」の道だけ通しておくのが、いちばん安いという話になります。

そして、この4つに即答できるかどうか自体が、会社を見分ける材料になります。聞いてみて初めて分かる部分なので、候補は最初から複数持っておくほうが早い。


よくある質問

Q. 60Aを超えたら、電気代はどれくらい上がりますか?

基本料金の計算方法が変わるので、一律には言えません。東京電力エナジーパートナーのスタンダードSは1アンペアあたりの単価で、スタンダードLは1kVAあたりの単価です。どちらのプランになるかで基本料金の出方が変わるため、契約前に「うちはどちらか」を確認してください。なお電力量料金(使った分の単価)は、この2つで同じ設定になっています。

Q. あとから契約アンペアを上げればいいのでは?

契約の変更自体はできます。ただし分電盤の主幹ブレーカーや引き込み線の容量が足りなければ、そちらの工事が先になります。新築時なら主幹の選定と幹線サイズの設計に含められますが、あとからだと工事が別で発生します。

Q. サウナに三相200Vは必要ですか?

家庭用の出力帯(おおむね2.7〜7.4kW)は単相200Vです。三相200Vが必要になるのは13.2kW以上の業務用クラスから。戸建てのサウナ室で三相を引く必要はまずありません。


この記事の情報について

  • 2026年9月23日 訂正。200V機器のアンペアを「消費電力÷200V」で数えて契約上限と比較していましたが、契約アンペアに対しては100V換算(÷100)で数えるのが正しいため、全面的に直しました。合計は65A→130Aに変わっています。結論(上限を超える)は変わりません
  • 根拠は、単相3線式では200V機器の電流がL1とL2の両方に流れるという仕組みと、サウナメーカーの電気工事仕様書に「電力会社の契約基準が100Vであるため」として6kW=60Aと明記されていることです
  • 回路の電流(÷200)とブレーカーの選定には、引き続き従来の数字を使います。2つは用途が違います
    この記事の内容は2026年9月6日時点の調査に基づきます。

  • 機器の消費電力は各メーカーの公表仕様です。ハルビアのサウナヒーターのスペック一覧、パナソニックのIHクッキングヒーターの仕様ページを参照しています

  • アンペア数(30A・20A・15A)は、公表された消費電力を200Vで割った自前の計算です。実際の設計では起動電流や同時使用率を見込むため、電気設計者の計算とは一致しないことがあります
  • 契約プランの区分は東京電力エナジーパートナーの公表内容です。他エリアは電力会社ごとに異なります
  • 主開閉器契約の換算式について、東京電力管内の扱いは今回の調査では確認できませんでした。中国電力の公表内容を「電力会社によっては単相3線式を200Vで換算する」という一例として挙げています
  • 商談の記述は、2026年8月30日に大手ハウスメーカー1社の展示場で受けた説明です。会社・担当者・時期によって変わります

料金単価と機器仕様は変わります。判断の前に、必ず一次情報で最新の値を確認してください。更新したらこの日付を改めます。


この記事は「設計」の工程です。

参考



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