世帯年収1500万の住宅ローンはいくらまで?上限1.1億と安全圏の差

世帯年収1,500万円で住宅ローンを組むとき、「いくらまで」には3つの別々の答えがあります(2026年8月22日時点の試算)。

「いくらまで」の意味 金額 根拠
審査に通る上限 約1.1億円 額面年収の35%・審査金利3.0〜3.5%
通説(年収の7倍) 約1.05億円 審査上限とほぼ同じ
手取りから逆算した安全圏 約7,800万〜9,300万円 手取り比25〜30%

審査上限と安全圏のあいだには2,000万〜3,000万円の開きがあります。銀行が貸してくれる額をそのまま借りると、この開きの分だけ生活が固くなります。

この記事は、実際にファイナンシャルプランナーに家計を渡して試算した過程で計算した数字を、世帯年収1,500万円のモデルケースとして公開するものです。


この記事でわかること

  • 審査に通る上限(約1.1億円)の計算過程と、それを鵜呑みにしてはいけない理由
  • 世帯年収1,500万円の手取りは約1,050万円。額面基準の危うさ
  • 1億円超を借りてよい世帯と、やめておくべき世帯の分かれ目

審査の上限は約1.1億円。ただし銀行の計算式で出た数字

銀行の審査は概ね「年間返済額が額面年収の35%以内」で見ます。年収1,500万円なら年間525万円、月43.8万円までです。

ここに審査金利(実際の金利ではなく、審査用に高く設定された金利)を当てて借入可能額を逆算すると、こうなります(35年・元利均等)。

審査金利 借入可能額の目安
3.0% 約1億1,400万円
3.25% 約1億1,000万円
3.5% 約1億600万円

「年収の7倍まで」という通説だと1億500万円。審査上限とほぼ同じ数字です。つまり通説の7倍とは「銀行が貸してくれる上限」の言い換えであって、「安全に返せる額」ではありません。


世帯年収1500万の手取りは約1,050万円。ここから逆算し直す

額面1,500万円の手取りは、社会保険料と税金を引くと約7割・年1,050万円前後です(家族構成・控除で変わります)。

年収500万円クラスの手取り率が8割弱なのに対し、1,500万円クラスは累進課税で7割まで下がります。額面基準の「35%ルール」は、年収が高いほど実態から離れていくということです。審査はゆるく見えるのに、生活の余裕はそこまで増えない。ここが高年収世帯の落とし穴です。

手取りに対する返済比率で借入額を逆算し直すと、次のようになります(変動1.0%・35年。2026年8月時点、主要行の変動金利は平均1.08%)。

手取り比 月々の返済 借入額の目安 位置づけ
20% 約17.6万円 約6,200万円 余裕を最優先
25% 約22.0万円 約7,800万円 安全圏
30% 約26.4万円 約9,300万円 安全圏の上限
35% 約30.7万円 約1億900万円 審査上限とほぼ同じ。常時この負担は重い

住宅ローンの返済額を、額面比と手取り比で並べる

同じ借入額でも、額面で見るか手取りで見るかで印象が変わります(変動1.0%・35年)。

借入額 月々の返済 額面比 手取り比
8,000万円 約22.6万円 18% 26%
9,000万円 約25.4万円 20% 29%
1億500万円 約29.6万円 24% 34%
1億2,000万円 約33.9万円 27% 39%

実際に総額1.25億円のシナリオ(借入1.2億円)を試算したとき、返済負担率は額面比26%・手取り比37%でした(変動0.8%時点の計算)。額面26%は審査上なんの問題もない水準です。しかし手取りの4割弱がローンで消える生活は、数字を見た瞬間に「重い」と分かります。

審査に通ることと、返せることは別の話──これが試算をやって一番はっきりした結論です。

金利が2%に上がったら、この試算はどう変わるか

ここまでの試算はすべて変動1.0%が前提です。変動金利が2%になった場合の試算と同じ前提(35年・元利均等、保証料・団信の上乗せは含まず)で、この記事の借入額を計算し直すと次のようになります(編集部試算)。

借入額 位置づけ 1.0%のとき 2.0%のとき 差額(月)
7,800万円 安全圏の下限 約22.0万円 約25.8万円 +3.8万円
9,300万円 安全圏の上限 約26.3万円 約30.8万円 +4.5万円
1億1,000万円 審査上限 約31.1万円 約36.4万円 +5.3万円

手取り月額(約87.5万円)に対する比率で見ると、審査上限の1億1,000万円を2.0%で借りた場合、返済は手取りの約42%まで上がります。安全圏の上限(9,300万円)に抑えていても、2.0%になれば手取りの約35%です。1.0%を前提にした「安全圏」は、金利が変われば安全圏でなくなります。


1億円超を借りてよいかは、年収の「中身」で決まる

世帯年収1,500万円といっても、中身はさまざまです。FPヒアリングで指摘されたのは、金額そのものより構成のリスクでした。

1. 変動する収入をベースに入れない。賞与や株式報酬など変動する部分を含めて1,500万円なのか、固定給だけで1,500万円なのかで、安全な借入額は大きく変わります。試算では、変動分を除いたベース収入だけで返済計画を立て、上振れした年の収入は繰上返済に回す設計にしました。

2. 共働きの場合、審査は「今の状態」で見られる。配偶者が育休中だとペアローンが組めず、単独年収での審査になるケースがあります。世帯年収では余裕でも、審査に使えるのが片方の年収だけなら、借入可能額は大きく下がります。復帰後の収入をあてにした計画は、審査の段階でつまずきます。

3. 返済期間の後半に山が来る。FPが挙げたリスクは3つ──収入の下振れ、教育費のピーク(中学から私立なら1人2,000万円超)、そして60歳以降に残るローンの「尻尾」。35年ローンを組むと完済は60代半ばです。教育費の山と定年後の返済が重なる時期を、試算表の上で先に見ておく必要があります。

この3つが手当てできているなら、審査上限に近い借入でも成立します。できていないなら、手取り比25〜30%の安全圏に収めるのが現実的です。

なお、借入1.2億円を実際に組んだ場合の返済額・金利上昇の影響・繰上返済の効果は住宅ローン1億円の返済額の記事で公開しています。頭金を1,000万円積んでも利息は147万円しか減らない、という計算結果もそちらにあります。


住宅ローン減税の所得要件に注意

高年収世帯だけが引っかかる制度上の線がひとつあります。住宅ローン減税の適用には合計所得金額2,000万円以下という所得要件があります(国土交通省・2026年8月時点)。

給与収入1,500万円なら通常は範囲内ですが、株式報酬の売却益や副収入で合計所得が2,000万円を超えた年は、その年の控除が受けられません。控除は最大13年・数百万円規模の話なので、収入の上振れが見込める人は、適用可否を含めて資金計画に織り込んでおくべき項目です。


この試算の前提

  • 35年・元利均等返済。保証料・団信の上乗せは含まない
  • 変動1.0%は2026年8月22日時点の主要行平均(1.08%)を丸めた値。金利は毎月動く。
    2026年8月の短プラ引き上げが変動金利に何をもたらすかは変動金利の記事で追っている

  • 手取り約7割は概算。家族構成・iDeCo等の控除で変わる

  • 審査基準は金融機関ごとに異なる。この表の額が借りられる保証はない

借入額を決める前のチェックリスト

  • ☐ 額面ではなく手取りで返済比率を計算したか
  • ☐ 変動する収入(賞与・株式報酬)を除いたベース収入で計算したか
  • ☐ ペアローン前提なら、配偶者の審査時点の就労状態を確認したか
  • ☐ 教育費のピークと返済期間後半の重なりを試算表で見たか
  • ☐ 金利が2%に上がった場合の月々の返済額を確認したか
  • ☐ 合計所得2,000万円超の年がありそうなら、減税の適用可否を確認したか

この記事は「お金」の工程です。


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