住宅ローンの変動金利が2%になったら|5年ルールは総額49万円高い

変動金利が2%になったら、借入5,000万円(35年・当初0.8%)で月々の返済は13.7万円から16.1万円へ、総返済額は5,734万円から6,627万円へ増えます。増加額は約893万円です(2026年8月23日時点の自前試算)。

ただし、この記事で一番伝えたいのはその数字ではありません。

「5年ルールがあるから急に返済額は上がらない」という安心は、総額で見ると逆に49万円高くつきます。5年ルールは金利上昇からあなたを守る仕組みではなく、支払いを先送りする仕組みだからです。


この記事でわかること

  • 変動金利2%は「あと約4回の利上げ」。今どのくらいの距離にあるのか
  • 5年ルールがある人とない人で、総返済額が49万円変わる理由
  • 「未払利息が怖い」は3.3%を超えてからの話。2%では発生しない

「変動2%」は、あと何回の利上げで来るのか

まず現在地です。

項目 2026年8月時点
日銀の政策金利 1.0%(2026年6月に引き上げ。約31年ぶりの高水準)
変動金利の平均 年1.082%
市場の次回利上げ予想 年内に1.25%へ

政策金利と変動金利は、ほぼ同じ幅で連動します。現在の関係をそのまま延長すると、こうなります。

政策金利 変動金利の目安
1.25%(年内予想) 約1.33%
1.5%(2027年頃の予想) 約1.58%
2.0% 約2.08%

つまり変動金利2%は、0.25%の利上げがあと約4回。市場では政策金利は2%前後が上限という見方が多く、変動2%は「明日来る数字」ではなく、上昇シナリオのほぼ天井という位置づけになります。

とはいえ35年ローンの途中で天井に触れる可能性は十分あります。だから試算しておく価値があります。


借入5,000万円で、2%になったら何が変わるか

当初0.8%で借り、5年経過後に金利が上昇した場合の試算です(35年・元利均等)。

上昇後の金利 月々の返済 総返済額 増加額
0.8%のまま 13.7万円 5,734万円 —
1.5% 15.1万円 6,244万円 +510万円
2.0% 16.1万円 6,627万円 +893万円
3.0% 18.4万円 7,440万円 +1,706万円

月々2.4万円の増加は、耐えられない額ではないかもしれません。しかし総額では893万円です。月額の感覚と総額の感覚が、これほど乖離するのが住宅ローンの怖さです。

より大きな借入では影響も比例して大きくなります。借入1億2,000万円の場合、0.8%と2.0%の差は総利息で約2,934万円です(詳細は住宅ローン1億円の返済額の記事)。


5年ルールは守ってくれない。総額は49万円増える

ここがこの記事の核心です。

多くの銀行には5年ルール(金利が上がっても返済額は5年間据え置き)と125%ルール(見直し後の返済額は従来の1.25倍まで)があります。これらは「金利が上がっても急に困らない仕組み」として説明されます。

しかし据え置かれるのは返済額だけで、金利は上がっています。その差額は消えません。元金の減りが遅くなるという形で、あなたの残高に積み上がります。

同じ条件(借入5,000万円・5年経過後に金利上昇)で、ルールの有無を比較しました。

上昇後の金利 5年ルールあり
総返済額
5年ルールなし
総返済額
差額
1.5% 6,264万円 6,244万円 +20万円
2.0% 6,676万円 6,627万円 +49万円
3.0% 7,661万円 7,440万円 +221万円
3.5% 8,276万円 7,869万円 +407万円

5年ルールがあるほうが、総返済額は多くなります。金利上昇が大きいほど差は開きます。

理由は単純です。返済額を据え置いているあいだ、増えた利息の分だけ元金が減らなくなるからです。10年後の残高を比べると、その差がはっきり出ます(2%へ上昇した場合)。

10年後の残高
金利上昇なし 3,711万円
2%へ上昇・5年ルールなし 3,808万円
2%へ上昇・5年ルールあり 3,962万円

5年間「返済額が変わらなくてよかった」と思っているあいだに、残高は154万円多く残っています。

さらに、据え置き期間が終わる11年目には、返済額がまとめて上がります。

月々の返済
1〜10年目 13.7万円
11年目以降(2%へ上昇していた場合) 16.8万円(+23%)

3%まで上がっていた場合は125%ルールの上限に張り付き、17.1万円(+25%)で頭打ちになります。頭打ちになった分はさらに次の5年へ先送りされるので、残高の減りはいっそう遅くなります。

5年ルールは、痛みを消す仕組みではなく、痛みを後ろにずらして少し増やす仕組みです。


あなたの銀行に5年ルールはあるか

ここで多くの人が誤解しています。「ネット銀行はルールなし」ではありません。同じネット銀行でも分かれます。

5年ルール・125%ルール 銀行の例
ある(返済額は5年据え置き) 住信SBIネット銀行、auじぶん銀行、楽天銀行、多くのメガバンク・地銀
ない(金利変更が返済額に直接反映) ソニー銀行、SBI新生銀行、PayPay銀行、SBJ銀行

(2026年8月時点。各行で扱いが変わることがあるため、契約前に商品説明書で必ず確認してください)

ルールがない銀行では、金利が上がると返済額がすぐ変わります。ソニー銀行は新金利適用の翌月返済分から、SBI新生銀行とPayPay銀行は6月・12月の返済分から反映されます。

急に返済額が上がるのは不利に見えますが、上の試算では総額は安く済みます。払った分だけ確実に元金が減り、未払利息も発生しないからです。

どちらが良いかは、総額を取るか、月々の予測可能性を取るかという選択です。教育費のピークなど支出が読める時期が控えているなら、返済額が5年固定されるメリットは実際にあります。「ルールがあるから安心」ではなく、「先送りの対価を払って安定を買っている」と理解するのが正確です。


「未払利息」が発生するのは3.3%を超えてから

金利上昇の記事でよく出てくるのが未払利息です。返済額を利息が上回り、元金が1円も減らないどころか利息が未払いとして積み上がる状態を指します。

不安を煽られやすい言葉ですが、発生する金利水準を計算すると、印象は変わります。

未払利息は「毎月の利息 > 据え置かれた返済額」になったときに発生します。借入5,000万円・当初0.8%・35年のケースで計算すると、次のとおりです。

時点 未払利息が発生する金利
借入直後 3.28%超
5年経過後(残高4,358万円) 3.76%超

2%では発生しません。それどころか3.5%でも発生しません。返済が進んで残高が減るほど、発生に必要な金利は上がっていきます。

当初金利が低いほど閾値も下がるので、参考までに借入直後の水準を並べます。

当初金利 未払利息が発生する金利
0.6% 3.17%超
0.8% 3.28%超
1.0% 3.39%超
1.2% 3.50%超

政策金利の上限が2%前後と見られている現状では、未払利息は現実的な心配の順位としては低いというのが計算した結論です。心配すべきは未払利息ではなく、その手前で確実に起きる「元金が減らない」ほうです。

実際、金利が0.8%から2%に上がると、同じ13.7万円を払っていても内訳はこう変わります(残高4,400万円時点)。

金利 利息 元金 元金の割合
0.8% 2.9万円 10.7万円 79%
2.0% 7.3万円 6.3万円 46%

払っている額は同じなのに、元金に届くのは半分以下になります。これが5年ルールの実態です。


では、何をすればいいか

試算して見えた優先順位です。

1. 自分の銀行にルールがあるか確認する。上の表は目安なので、契約書か商品説明書で確認してください。これが分からないと、金利が上がったとき自分に何が起きるか予測できません。

2. 繰上返済のほうが頭金より効く。同じ「多く払う」でも、頭金1,000万円の利息削減が147万円なのに対し、年200万円の繰上返済は650万円削減します。金利上昇局面では、手元資金を残して繰上返済で対応するほうが柔軟です(計算過程は1億円記事)。

3. 2%時点の返済額で家計が回るか、先に確認する。借入額を決める前にやるべきことです。額面ではなく手取りに対する比率で見てください(世帯年収1500万の借入上限の記事で手取り基準の計算方法を書いています)。

4. これから借りるなら、融資実行日を意識する。適用金利は契約日ではなく融資実行日のものです。注文住宅は工期で実行日がずれるため、この時期は1日違いで数十万円変わります(2026年8月の短プラ引き上げの記事)。


よくある質問

Q. 5年ルールがない銀行は避けるべきですか?

いいえ。上の試算では、ルールがないほうが総返済額は安く済みます。避けるべきなのは「ルールがあるから金利が上がっても平気」と考えることのほうです。返済額が5年固定される安心を買いたいなら、その対価として総額が増えることを理解したうえで選んでください。

Q. 変動から固定に借り換えるべきですか?

2026年9月時点で、変動と固定の金利差は2.27ポイント開いています(フラット35の最頻金利3.46%と、三菱UFJ銀行の変動最優遇1.195%の差。住宅金融支援機構の公表値と報道による。2026年9月6日確認)。固定に移ると、上昇リスクは消える代わりに、上がるかどうか分からない金利差を今すぐ確実に払うことになります。この差が過去最大級に開いている局面では、借り換えの損益分岐点は高くなります。判断には残債と残期間が要るので、個別に試算してください。

Q. すでに借りています。今すぐ何か起きますか?

すぐには変わりません。変動金利の見直しは年2回で、2026年6月の利上げが返済額に反映されるのは2027年1月以降が一般的です(PayPay銀行・楽天銀行など一部は7〜8月に反映済み)。時間があるうちに、上の「何をすればいいか」を確認しておくのが現実的です。


この試算の前提

  • 借入5,000万円・35年・元利均等返済。当初金利0.8%
  • 金利上昇は5年経過直後(62ヶ月目)に一度だけ起き、その後は一定と仮定
  • 5年ルールは5年ごとの返済額見直し、125%ルールは見直し時の上限1.25倍として計算
  • 保証料・団信の上乗せ、繰上返済は含まない
  • 政策金利と変動金利の対応は、2026年8月時点の関係(政策1.0%/変動平均1.082%)をそのまま延長した概算
  • 金利予想は予想であり、外れます。この記事の数字は「そうなった場合にどうなるか」の計算であって、そうなるという予測ではありません

金利上昇に備えるチェックリスト

  • ☐ 自分の銀行に5年ルール・125%ルールがあるか、契約書で確認したか
  • ☐ 金利2%時点の月々の返済額を計算したか
  • ☐ その返済額で家計が回るか、手取りベースで確認したか
  • ☐ 5年ルールがある場合、据え置き期間終了後に返済額が2割強上がることを織り込んだか
  • ☐ 頭金を積むより繰上返済に回すほうが有利か、比較したか
  • ☐ これから借りるなら、融資実行日の金利適用ルールを確認したか

出典

返済額・総返済額・未払利息の閾値は、上記の金利水準をもとに当サイトで計算したものです。


この記事は「お金」の工程です。



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